1.行政保健師の仕事内容

看護師は所定の養成課程を修了し、国家試験に合格することで保健師の資格を取得することができ、保健師が勤務可能な職場へと転職することが可能となります。
看護師の中には行政機関で働く行政保健師への転職を見据えている人は少なからずいますが、この行政保健師の仕事内容はどのようになっているのでしょうか。
行政保健師の主な職場は保健所や保健福祉担当の部署

行政保健師の主な仕事場所は、都道府県や政令指定都市に設置されている保健所や、市町村の保健福祉を担当する部署です。ここでいう保健福祉を担当する部署とは主に、児童家庭課や高齢者福祉課、保健センターなどを指しています。
実は、国内で就業している保健師の半分以上は市町村の保健福祉担当部署に勤務しており、保健所で勤務している人を含めた行政保健師の全就業保健師に占める割合は7割以上にもなります。
保健福祉担当の部署に勤務する保健師の仕事について

市町村の保健福祉を担当する部署に勤務している保健師の仕事内容は幅広いです。
- 児童家庭課での仕事内容
例えば、児童家庭課にいる保健師は18歳以下の子供と、その子供の家族を対象に、児童手当などの各種手当に関する事務や、育児支援、就労支援、生活支援に関する業務、児童相談所との連携による虐待に対する対応などを行っています。
- 高齢者福祉課での仕事内容
その一方で、高齢者福祉課にいる保健師は、65歳以上の高齢者と、その高齢者を親に持つ人たちを対象に、介護保険に関する事務や、介護予防に関する業務、老人福祉施設やその運営母体である社会福祉法人に関する業務などを行っています。
自治体職員の健康管理や福祉計画の策定

また、行政機関につとめている保健師として、勤めている自治体職員の健康管理を担当する者もいます。
福祉関係の業務に従事してキャリアを重ねると、福祉計画の策定にも関与できるようになります。
保健所に勤務する保健師の仕事について

一方、保健所に勤務している保健師は、管轄区域となっている都道府県の住民の健康増進をはかるために、身体障害者や精神障害者、難病患者などに対するサービスや、インフルエンザやノロウイルス、B型肝炎、C型肝炎などといった感染病に関する調査や対策など、広域かつ専門的な内容が中心となっています。
患者に対する検査では保健師自身が作業を行うことがあり、看護師として働いていた頃の医療に関する知識や技術が生きる機会があります。

行政保健師は地方行政の様々な場所で活躍しています。仕事内容は採用された自治体によっても、配属される部署によっても大きく異なっていますが、地域住民の疾病予防や健康増進、福祉向上をはかるための仕事をするという点では共通しています。
2.転職するのに必要なスキル・資格

看護師の資格を持っているのであれば、病院やクリニックで看護師として働く以外に、行政保健師に転職することもできます。
ただし、そのためには看護師資格の他にも必要な資格があります。
公務員試験に合格する必要がある

行政保健師は、都道府県や市区町村で働く保健師ですので公務員試験に合格しなければなりません。
職員採用募集の案内は、各都道府県、市区町村の広報誌や公式サイトで公表されますのでチェックしましょう。募集開始のタイミングはそれぞれ異なりますので要注意です。また、自治体によっては年齢制限を設けている場合もありますので、この点も事前に確認しておきましょう。
条件を満たした上で国家試験に合格する必要がある

行政保健師になるには、看護師の資格を持っていて、かつ、保健師助産師看護師法によって定められた「文部科学大臣が指定した学校で保健師になるための学科を6ヶ月以上修めていること」、「厚生労働大臣が指定する保健師養成所を卒業していること」、「外国の保健師学校を卒業または外国で保健師免許を取得していて、厚生労働省が他2つの項目と同程度の技能、知識を有していると認めていること」のいずれかを満たしていなければなりません。
これらの要件を満たした上で、国家試験に合格しなければなりません。
幅広いスキルが必要になる

行政保健師は公務員ですから、基本的に土日祝日がお休みで残業が少ないため、病院看護師に比べてライフワークバランスが取りやすい仕事で、怪我や病気を治療するのではなく、健康を維持して病気や怪我を予防することを目的とした保健指導や健康診断を通して人々の健康を守ることが主な仕事です。
勤務先は保健所や保健センター、児童相談所などで、これらの施設の利用者に対して健康サポートを提供する仕事ですから、幅広いスキルが必要になります。
- 高いコミュニケーションスキル
乳児や妊婦、高齢者や障害者、なにかしらの理由で親元を離れて暮らさなければならない子供達と接する機会が多いため、コミュニケーションスキルの高さはとても重要です。
- 法律や制度を理解する能力
また、行政が提供する保健サービスは法律の枠内での支援となりますので、法律を読む、規定の制度を理解するという能力も求められます。
ただし、これらのスキルは最初から必要ということではなく、実際に行政保健師として転職をした後にスキルアップしていけば良いでしょう。

公務員であるため安定した仕事で、育児休暇などの制度も整っているため看護師からの転職先として人気の高い仕事ですが、公務員採用試験は非常に難しい試験であり、募集人員そのものが少ない状況にあります。
また、行政が勤務地を決めるため、離島や過疎地での勤務を命じられることがあることも理解しておきましょう。
3.行政保健師への看護師転職のメリット

保健師の職場は病院や福祉施設などさまざまありますが、その中でも都道府県・自治体の保健所や保健センターで勤務する保健師を行政保健師と言います。
ちなみに看護師と似たような職業に見えますが、病気や怪我を治るまでのお手伝いをしてくれるのは看護師であり、保健師は病気や怪我にならないようお手伝いをしているのです。看護師の資格を国家試験で取って更に保健師の国家試験にも合格しなければなることはできず、看護師の知識以上のプラスアルファの能力が求められます。
安定した給与や待遇を受けることができる

一般の病院と違い、行政機関で働く場合、公務員になれるので給与や待遇が安定します。
そのため行政保健師への転職を希望する人は多いです。
子育て世代の女性が働きやすい

一般的な公務員同様に、産休や育休などの休暇制度が充実しています。
夜勤もないし土日は休みなので職場的に子育て世代の女性が働きやすい環境が整っています。
女性の出産や子育てに理解がある職場が多い

また、大多数が女性の職場のため出産・子育てに対する理解があるのもメリットです。
そういった制度を充分に活かすことができます。そのため女性の転職希望者が多いです。
長く務めるほど給与がアップする

しかしながら、その採用枠は少なく狭き門です。出産・子育てを経ても働き続けることができるため一度採用されると長く勤務する傾向が強いからです。
その分、公務員のため長く勤めれば勤めるほど年功序列で給与は上がっていきます。
大変だけどやりがいがある

ただ、いずれにしても地域住民の健康管理・維持が仕事の主なものであり、対象者ややり方は変わってくるものの、人と接することの多い職場です。
出産の不安を抱えていたり不慣れな育児に精神的に参ってしまっている女性の相談に乗ってあげたり、中高年に成人病や生活習慣病の予防・改善のアドバイスをしたり、高齢者に病院への入院のアドバイスをしたりハードですがやりがいのある仕事です。
4.行政保健師への看護師転職のデメリット

患者さんの病気や怪我の治療にあたって看護するという看護師の仕事と、地域の住民の健康を維持・促進のために支援を提供するという行政保健師の仕事内容は根本的に異なります。
このため、自分のキャリアをどのように形成していくのか、自分がやりたい仕事はどのような内容なのかによって、看護師資格を持つ方が行政保健師に転職するにあたってのメリットとデメリットが変わってきます。
臨床でのスキルを発揮する場面が少なくなる

仕事上求められるスキルを比較してみましょう。看護師は臨床でのスキルの高さや医師やその他のスタッフとのチームワークの良さが求められるのに対し、行政保健師になると臨床でのスキルを発揮する場面は極めて少なくなります。
そもそも保健師は、妊婦や乳幼児、高齢者、障害者など地域の人々が健康で過ごせることをお手伝いするすることが仕事ですので、健康診断や保健指導、介護予防などの支援を提供します。このため、転職後、看護師としてのスキルの高さを発揮できる場面は極めて少ないと考えて良いでしょう。
臨床看護師として仕事にやりがいを感じていて、その分野でのキャリアアップを目指す方にとっては、行政保健師への転職は不向きといえるでしょう。
転職するのが難しい

転職の難易度も検討する必要があります。行政保健師になるためには、看護師と保健師の両方の国家資格が必要ですので、看護師国家資格を取得したのち、6ヶ月以上の専門課程を経て保健師国家資格を取らなければなりません。その後、都道府県や市区町村の公務員試験を受験し、公務員として採用されなければなりません。
公務員試験そのものが難関であるだけでなく、募集人員数が少なく、年齢制限もあるため狭き門なのです。
残業や夜勤がない反面収入面に満足しない場合もある

収入面でデメリットを感じる方もいます。市区町村保健師の場合、新卒で約300万円から約400万円、30代で約400万円から約500万円。都道府県保健師ですと、新卒で約350万円から約450万円、30代で約600万円程度になります。夜勤手当などを含む看護師としての給料に比べると年収は低めです。
ただし、公務員の場合には年功序列で毎年昇給がありますから、生涯年収での比較した際、どちらが魅力的かは個人の判断に委ねざるを得ません。
看護師とは異なる精神的ストレスがある

また、行政保健師は地域住民から健康に関わる様々な相談を受けるのも仕事の一部ですので、高齢者や障害者などからの相談の内容によっては看護師では感じることのない精神的なストレスが大きい場合があり、この点をデメリットと思う人もいるでしょう。
勤務地が希望通りでないことがある

都道府県によっては離島への赴任を命じられることもあり、勤務地の希望が必ずしも受け入れられないこともあるというのもデメリットの一つといえるでしょう。
5.行政保健師への看護師転職求人の探し方

看護師の間で人気の転職先として保健師があります。企業の社員のメンタルヘルスを支える産業保健師や保健室の先生とは別に生徒たちの成長のサポートをする学校保健師もありますが、70パーセント前後の方は行政保健師として全国で就労しています。行政保健師がサポートするのは地域住民です。
都道府県の保健所や市町村の保健センターで就労して地域住民がいつでも健康でいられるよう心と体をケアするのが役割です。
公務員試験は年齢制限があるので注意

保健師になるには看護師資格を持っているだけではなく、保健師の養成学校で1年以上学び、国家試験に合格する必要があります。看護師と保健師両方の知識が必要となるのです。
更に行政で公務員として働く以上、公務員資格も取らなければなりません。公務員試験は年齢制限があるため行政保健師を目指すのであれば資格取得を急ぐ必要はあります。
人気な職種であるために転職は容易ではない

ただ、資格を持っているからといって転職は簡単ではありません。公務員の一員であるため土日祝はお休みです。残業もあまりなく、女性が多い職場のため産休や育休も取りやすい環境です。他の職場であれば結婚・出産・育児などライフスタイルの変化によって女性は働きづらくなりやめる方も多いのですが、融通が利き、福利厚生もしっかりしているのでそのまま続けられる方が多くなるのです。
また公務員の昇給制度も適応するため、残業がない分それほどではないにしろ、給料は確実に上がっていくのです。もちろん、地域住民のために働けるというやりがいや充実感も高い職場なのも人気な理由です。
離職者がいる場合募集が行われる可能性がある

やめる人が少ないのであれば求人数も少なくなってしまいます。
毎年、希望する地域の保健所などが募集をかけているとはいえず、逆にご主人の転勤についていって引越しするからなど退職時期とは別の月にやめた人があれば、随時の募集が行なわれる可能性もあるのです。
行政保健師に強い転職サイトへ登録する

行政保健師の求人の探し方は、とにかく行政保健師に強い転職サイトへの登録を行なうことです。ただ閲覧するのではなく登録するほうが確実です。なぜなら、人気の案件はサイトに載せると希望者が殺到して大変なことになってしまいます。そのためきちんと登録している人だけが見ることができる画面にちょこっと載せるだけという場合が多いからです。
その業界の中でも大手のサイトに登録して、日ごろから気にかけるようにしましょう。
行政で働く以上、公務員資格取得の期限もありますし、転職を希望するのであれば早め早めに対応することが必要です。


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