
高齢社会を迎えた日本ですが、それに伴って高齢者関連の仕事も増加傾向にあるようです。
しかし、一言で高齢者関連のお仕事といっても、さまざまな種類のものがあると思います。ですが、どんなタイプの仕事であっても仕事に対するスタンスに変わりはないと思います。
今回は、高齢者の介護をこれから担う介護者の育成、つまり教育現場における講師のお仕事について紹介したいと思います。
1. 介護者を養成する講師の仕事概要と背景

私が担当していたのは、ホームヘルパー2級養成講座の講師の仕事でした。ホームヘルパーの資格取得に向けたカリキュラムを基に構成された講座です。
講座のカリキュラムはおよそ6か月を1つのクールとして、資格取得に向けて必要な知識や技術を身につけていくという講座でした。
講座のカリキュラムの内容

カリキュラムの内容は講義と実技が半分半分くらいの割合でした。講義と実技を交互に行うのですが、実技演習の時に使用する専用の教室もちゃんと用意されていました。
ヘルパー養成講座とはいっても、看護技術と重なる部分も多く、洗髪や清拭、口腔のケアや衣服の着脱、体位変換やおむつ交換など、あらゆる技術を実演しなければなりませんでした。
ガイドヘルパーとしての実技
ホームヘルパーは、高齢者だけに限らず障害者の介護も対象としています。そのため、ガイドヘルパーとしての講義内容も盛り込みました。
目が見えない方の感覚を知ってもらうため、アイマスクをつけてもらって実際に学校の近くを歩いてもらうのです。ふたり一組になって、立ち位置やガイドの方法など、実践で身につけてもらう授業も行いました。
施設と生徒のマッチング作業を行う

施設は私たち講師がピックアップしますが、受講生たちはその候補の施設の中から、自宅から近い施設などを選ぶわけです。人気のある施設は希望者が多くなるので、第一希望から第三希望まで受講生には出してもらいます。
施設へ連絡を取り実習について説明する
一方、受講生を受け入れてもらう高齢者施設に対しては、電話をしたり、訪問したりして、実習の目的やどんな受講生が実習に通うのかなどを説明する作業も必要となりました。
実習するのに適した施設であるかどうか、という点も見逃すわけにはいきません。でも何より担当者とのコミュニケーションを良好に保つこと、これが実習を成功させるための第一歩であると思います。
授業がない平日の仕事内容は講義の準備や打ち合わせ等

受講生の中には、仕事を持っている人もいたので、講義および実習は主に土・日に行います。しかし、授業がない平日には、講義のための準備や実技のための打ち合わせなど、結構もりだくさんの仕事内容でした。
実技を行うにあたっては、介護福祉士の養成学校ということもあって、備品は揃っていて、実習するにあたって不便さを感じることはほとんどありませんでした。
受講生たちのカリキュラムに抜けがないよう慎重に確認する

講座の最終段階は、先ほどもお話したように施設での実習です。これらのカリキュラムを全て終了してはじめて、ホームヘルパー2級の資格を取得するための試験を受けることができるのです。
そのため、講座のカリキュラムについては受講生が全て終了しているか、抜けがないように十分に確認を行わなければなりません。一番神経を遣うところでもあります。
2. 受講生の背景や受講する目的は様々

ホームヘルパー養成講座の受講生はさまざまで、年齢層は10代から70代くらいまでと幅広く、講座を受講する目的にしても、身近な家族のためにホームヘルパーの資格を取りたいという人から、看護師の資格は持っているけれど、これからの仕事に役立てたいという人まであらゆる目的を持って受講されていました。
受講生たちは資格取得に向けて努力をしている人達

受講生たちは、仕事をしながら土・日に講義を受け、資格取得という目的に向けて頑張って努力をしている人たちです。
ある人は仕事を抱え休日返上で、またある人は家庭に負担をかけながら、またある人は将来の希望に向けて貯金をはたいて、といったようにさまざまな思いで受講されています。
講師側の手違いで受講生の努力を無駄にすることは許されない

そのため、こちら側の手違いで試験を受けられないというような事態が起こってはいけないのです。
万が一、手違いや何かが抜けていて試験を受けられないということにでもなれば、時間やお金もですが、休み返上で努力してきた行為自体が無駄になってしまいます。
3. 医療界の常識は通用しないという前提を持つ

長いこと医療関連の仕事をしていると、医療界では当たり前と思っていることでも、それが通用しないと感じることも少なくないと思います。
特に、これまで医療に関わったことのない人を対象に講義などをする場合、知らないのが当たり前という前提で進めなければ、どこかでズレが生じてしまうように思います。
自分の当たり前は受講生にとっては当たり前ではない

ホームヘルパー養成講座で受講生を対象に講義をする時にも、そういった現状に触れる機会が何度かありました。
そのひとつが、身体介護についてです。そこで、やはり誰もが気になっていたのが「おむつ交換」です。ある受講生が私にこんな質問をされました。
「おむつ交換は実際にはしなくていいんですよね。」
私は返答に困りましたが、実習なのでおむつ交換も経験してもらわなければなりません。教室での実習では、人形や洋服を着たままの受講生同士で練習を行いました。要するに、仮想の現場なので、リアリティは当然ありません。
実習を行い感覚を理解してもらう必要がある

受講生にはおむつの感覚を知ってもらうために、自宅で1日、実際におむつをつけてもらう日を設けてもらいました。おむつ交換は、そう都合のいいことばかりではありません。実際に経験をしなければわからないことの方が多いはずです。
だから実習が必要となるのです。どんな時に漏れやすいのか、おむつをつけることでどれ程不快感を感じるものなか、そういったところを理解してもらうのは、結構大変な作業でした。
このように、医療界では当たり前と思っていることでも、医療界以外では当たり前ではないこと、通用しないこともあることを前提にしていた方がいいのだと思います。
4. 人生の先輩に尊敬の念をもって接する

介護関連の仕事は、当然のことですが、高齢者を対象としています。多くの場合が、患者さんの方が介護者よりも年長である場合がほとんどなのではないかと思います。
仲良くなることと馴れ合いになることは違う

介護施設などではよく、「おばあちゃん」とか「おじいちゃん」などと、患者さんを呼んでいる光景を目にすることがありますが、あくまでも介護をする立場としては、「○○さん」と呼びかけるのが基本だと思います。
そしてまた、私たちもそう指導してきました。患者さんと仲良くなることはいいことだと思いますが、仲良くなること、馴れ合いになることと、親近感を抱くこととは違うのだということを理解してもらわなければならないのだと思います。
尊敬の念を持って介護にあたらなければならないことを伝える必要がある
時に認知症を発症したり、あるいは記憶障害を発症したり、というふうに退化してしまうこともあると思います。だとしても、人生の先輩として尊敬の念を持って介護にあたらなければならない、ということを伝えていかなければならないのだと思います。
介護は大変だがとてもやりがいのある仕事

介護の現場についていえば、身体的にもきついことが多く、経済的にも決して楽な世界ではないと思います。しかし、とてもやりがいのある仕事であることに間違いはありません。
高齢者に接すると癒されることも少なくありません。高齢者と接する時間は、現代社会の中では感じることのできない、どこか特別なものがあるように思います。
介護の楽しさを伝えることが講師にとってのやりがいに繋がる
きっと介護の仕事は好きでなければできないものだと感じます。だからこそ、介護の仕事をしたいと希望する人たちの長所を伸ばして、介護の楽しさを伝えることができれば、講師の仕事はとてもやりがいのあるものになるのではないかと思います。
5. 看護と介護の狭間でスタッフ間の確執が起きる

私が講師として勤務していた学校は、介護福祉士の養成学校であることはお伝えしたと思います。そのため、講師の中には介護福祉士の資格を持った人も講義を担当していました。
ご存じのように、介護福祉士は看護師と同じく国家資格となります。ここで、同じく国家資格である看護師と介護福祉士の意見の相違が起きたりするわけです。
信念を持っている分お互い妥協することができない

介護福祉士の方も信念を持って介護にあたる人が多いので、なかなか妥協してくれないことも多々ありました。
学校という狭い世界の中であれば、多少の妥協点を見いだすこともできるのですが、実際の介護施設などの現場では、さらに職種も増えるので、そう簡単ではない場合も少なくありません。
基本的に介護に看護は含まれませんが、介護という大きな枠組みの中では、看護を必要とする患者さんがいるのは当然のことです。そのあたりの対立が施設の中では起こりやすいようです。
看護の視点を視野に入れた介護と、介護のみに視点をおいた介護とでは、衝突が起きるのも当然といえば当然なのかも知れません。
準看護師と介護福祉士も意見の相違が起こりやすい

准看護師が加わることで、物事がさらに複雑化します。
准看護師は県の認可となりますが、医療行為を行うことができます。一方の介護福祉士は国家資格ですが、医療行為を行うことができません。このあたりが複雑に絡み合って意見の相違を生じる原因となってしまうようです。
簡単にいうと、誰の指示を優先するのかといったようなことです。
共に出来ることを協力しあうことが重要

ホームヘルパーであれ、介護福祉士であれ、正看であれ准看であれ、介護という目的が同じであることに変わりはありません。ひとつの目的に向かって共にできることを協力しながら行なうことが重要なのだと思います。
言葉などでは説明が難しい、業界の複雑な背景もそれとなく受講生に理解してもらえると、実際に現場で働くようになった時、戸惑いも少ないのではないかと思ったりします。
6. 講師という仕事について

私は、たまたまホームヘルパー養成講座の講師として勤務しましたが、人に何かを教えるということは、自分が学ぶ機会が与えられるということです。
何もないところからカリキュラムを作るのは本当に大変でしたが、これまで経験してきた看護を振り返り、また改めて学ぶことで、自分が成長できたように思います。
講師として誠意をもって仕事に向き合うことが大切

決して、人前で話すのが得意な方ではないのですが、それにも関わらず、受講生には大変感謝されました。感謝のお手紙を頂いたり、時には介護についての相談を受けたりすることもありました。
どんなことも初めての挑戦は心配なものです。でも、完璧でなくても、一生懸命に向き合っていれば、それは相手に必ず伝わるものだと思います。上手くなくても誠意を持って仕事に向き合ってほしいと思います。
まとめ

学校によっては、講座内容をゼロから自分で作成しなければならないこともあります。 ホームヘルパー養成講座に限らず、養成講座を受ける人は目的を持って受講しています。それに応えられる内容の授業を心がけることが大切です。何より、誠意をもってあたることが一番です。
医療の世界では当たり前のことでも、医療以外の世界では当たり前でないこともあります。これから介護を担う生徒に対しては、対象となる高齢者には敬意と尊敬の念を持って接することの重要性を伝えることが大切です。
さまざまな職種が入り乱れる介護の現場では、職種間の衝突が起こることも少なくありません。それぞれの職種が自分の役割を認識して、お互いに協力できる環境を構築することの重要性を伝えることが必要です。


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