1.そもそも意識障害とは何か

意識清明とは意識がある状態のことを指します。では、意識がある状態とはどんな状態でしょうか。
第一に患者が覚醒していること、加えて周囲の状況を認識できる状態であること、そして周囲からの刺激や情報に反応できること、この3点が成立している状態が意識清明であると判断できます。
意識障害は意識清明でない状態

意識障害とは意識清明ではなくなった状態だということがわかります。
意識清明が「覚醒しており、周囲と自己を正しく認識し、反応できる状態」であることに対して、意識障害とは「周囲からの刺激に対する反応が低下もしくは失われた状態」であると考えられます。
患者本人が意識障害を自覚する事はない

患者本人が意識障害を自覚することはありません。また、「頭が重い感じがする」、「物事に集中できない」など患者本人が症状を訴えることができる場合も、「覚醒しており、周囲と自己を正しく認識し、反応できる状態」であるため意識障害とは呼びません。
例えば、睡眠中も一見すると意識は失われているように見えますが、周囲からの刺激によって容易に覚醒することができるため意識障害とは呼びませんよね。臨床現場で混同しがちなのが、脳血流の一過性低下による短時間の意識消失、いわゆる失神や認知症患者にみられる見当識障害は意識障害とは区別されます。
意識障害は脳幹部の障害によって起こる

意識清明とは「覚醒しており、周囲と自己を正しく認識し、反応できる状態」、意識障害とは「周囲からの刺激に対する反応が低下もしくは失われた状態」と言いましたが、人間の意識を司る臓器は脳です。
そのため、意識障害が生じているということは、脳の機能が障害されているということ、大脳全般および脳幹部の障害によって起こるとされています。脳そのものの障害によるものを一次性、脳以外の臓器障害から引き起こるものを二次性に大別されます。
2.意識障害は大きく分けて2種類ある

意識障害は「周囲からの刺激に対する反応が低下もしくは失われた状態」であり、脳の機能障害によって起こります。
そして、意識障害は「意識清明度の低下」と「意識内容の変化」との2種類に分けられます。
意識清明度の低下とは

「意識清明度の低下」とは臨床現場では、「意識レベルの低下」と表現されることが多いでしょう。ジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale:JCS)やグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale:GCS)で経時的に観察していく必要があります。
「意識清明度の低下」は「意識レベルの低下」であり、周囲からの刺激に対する反応の低下で,「昏睡」、「昏迷」、「傾眠」などがあります。
- 昏睡(deep coma):四肢の自発運動がみられず、周囲からの刺激に全く反応しない状態で、四肢は弛緩している状態
- 昏迷(stupor):四肢の自発運動はみられ、周囲からの刺激に対して振り払うなどの動作がみられる状態、簡単な指示動作には反応することがある
- 傾眠(somnolence):周囲からの刺激に対して覚醒し、呼びかけに反応あり、指示動作がみられるが、刺激がなくなると眠ってしまう状態。錯覚や妄想、せん妄を呈することもある
意識内容の変化について

意識障害における「意識内容の変化」は「混濁」「せん妄」、「朦朧(もうろう)」などが挙げられます。
混濁について
周囲からの刺激に対して反応はあるが注意力が低下している、記銘力が低下している、落ち着きがない、時折傾眠傾向を呈している状態、清明度の低下と類似した状態であります。
せん妄について
軽度もしくは中等度の意識レベルの低下がみられます。
周囲からの刺激に対して注意力が低下しており、妄想や幻覚が出現したり、睡眠と覚醒のリズムが障害されている場合があります。支離滅裂な会話、妄想に基づく異常行動がみられ、症状は変動しやすいことがあります。
脳血管障害や認知症の患者にみられる「夜間せん妄」もせん妄の一つと言えるでしょう。
朦朧(もうろう)について
周囲からの刺激に対してかろうじて反応できるが、広く適切に周囲を認知したり、その認知に基づく判断や対応する能力が低下した状態です。
急性アルコール中毒やてんかん発作、薬物中毒などでみられることもあります。
3.意識障害になる原因とは何か

意識障害は「周囲からの刺激に対する反応が低下もしくは失われた状態」であり、脳の機能障害によって起こります。
そして、意識障害は「意識清明度の低下」と「意識内容の変化」との2種類に分けられることがわかりました。ここでは、その原因は何かを考えていきます。
脳の機能障害は全身性の疾患によっても生じる

意識は脳の機能障害ですが、原因は頭蓋内病変だけでなく代謝性疾患、呼吸状態悪化による低酸素など全身性の疾患によっても引き起こされます。そして、その原因は一つだけとは限らず複数の原因によって引き起こされる場合もあります。
そのため、原因を見逃さないためにも、診断の手がかりとして使われるもの、「カーペンターの分類」というものがあります。
カーペンターの分類について

特に救急の分野で用いられることが多い、意識障害の鑑別診断方法です。意識障害の鑑別時に考えられる疾患の頭文字を並べたもので、それらを日本語で覚えやすいように並び替えたものです。
下記のように、AIUEOTIPS(アイウエオチップス)で覚えましょう。
- A(Alcohol/Acidosis/Aorta):アルコール中毒、アシドーシス/アルカローシス、大動脈解離
- I(Insulin):低血糖
- U(Uremia):尿毒症、腎不全
- E(Endocrine): 内分泌異常、電解質異常
- O(Oxygen/Opiate):低酸素血症、麻薬
- T(Traum/Tremperature):外傷、体温異常
- I(Infection):感染症
- P(Psychiatric):精神疾患
- S(Syncope/Stroke/Shock)失神、脳卒中、ショック
もし臨床現場で意識障害に遭遇した場合、経験が少ない人はAIUEOTIPS(アイウエオチップス)を最初から最後まで確認していくのも一つの手だと思います。何はともあれ患者の安全が第一ですので、その目的を果たせればいいのですから、なりふり構ってはいられません。
緊急性の高い疾患は優先的に除外する必要がある

AIUEOTIPS(アイウエオチップス)は広範囲な意識障害の鑑別に対して、現病歴や既往歴、身体所見などを考慮して疑わしい疾患を絞り込むために使っていくとより効率的に活用することができると思います。
AIUEOTIPS(アイウエオチップス)は意識障害の原因を全て検索するためのものではなく、他の所見と合わせて考えて行けるといいですね。そして、AIUEOTIPS(アイウエオチップス)の中でも、緊急性の高い疾患は優先的に除外していけるように関わる必要があるでしょう。
4.意識障害に対する観察とはどんなものがあるか

意識障害に対する観察には、ジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale:JCS)やグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale:GCS)で経時的に観察する必要があります。
ジャパン・コーマ・スケールとグラスゴー・コーマ・スケール

ジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale:JCS)について
- 300 まったく動かない
- 200 手足を少し動かしたり顔をしかめる
- 100 はらいのける動作をする
- 30 かろうじて開眼する
- 20 痛み刺激で開眼する
- 10 呼びかけで容易に開眼する
- 3 名前、生年月日が言えない
- 2 見当識障害あり
- 1 清明とはいえない
最後に補足説明の意味になる言葉
- R(Restlessness):不穏
- I(Incontinence):(糞尿の)失禁
- A(Akinetic mutism/Apallic state)無動性無言/自発性喪失
グラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale:GCS)ついて
- 自発的に 4
- 言葉により 3
- 痛み刺激により 2
- 開眼しない 1
- 見当識あり 5
- 錯乱状態 4
- 不適当な言葉 3
- 理解できない声 2
- 発声がみられない 1
- 命令に従う 6
- 痛み刺激部位に手足をもってくる 5
- 痛み刺激に対して四肢を払い除ける 4
- 四肢を異常屈曲させる 3
- 四肢が進展している 2
- 全く動かさない 1
最後に補足説明の意味になる言葉
- T(Tracheotomy):気管切開
上記のように、ジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale:JCS)やグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale:GCS)には患者の状態を表すことができますが、その評価は観察者の主観や今までの経験によって左右されることが考えられます。
低酸素脳症による意識障害の患者の例

低酸素脳症による意識障害の患者を考えてみましょう。刺激をしなくても覚醒しており開眼はしていますが、看護師からの声かけや刺激に対する反応がみられない場合、皆さんはどう判断しますか反応が無くても覚醒しているからJCSはⅠ桁ですかそれとも、覚醒はしていても刺激に対する反応がないからJCSはⅢ桁でしょうか。
臨床現場では型通りにいかないことは多い

臨床現場では型通りにいかないことは多くあります。その時には、ジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale:JCS)やグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale:GCS)だけを頼り、それだけで評価していくよりも、具体的な状況を把握する方が良いです。
- 開眼はずっとしているか
- 様々な刺激に対する反応はどうか
- 呼名にはどんな反応をするのか
- YesやNoの質問に答えるか
- 発語をする際は、意思疎通のできる言葉になっているか
- 痛み刺激はどこの部位にしてどんな反応を示すのか
具体的には上記のようにできるだけ具体的な状況を記載する方が理解しやすく、観察者が変わっても一定の状況下で観察を行えることで、継続的な観察を行うことや状態の変化、以前の状態との比較がしやすいと考えられます。
まとめ

意識障害とその観察方法は理解できましたか。
慢性期病棟でも急性期病棟でも、またどの領域の科の病棟でも必ず観察する意識状態です。なんとなく観察するよりも、具体的に説明できるレベルやきちんと理解して観察することで、普段の何気ない観察が意味を成していることがわかると思います。
上記記事でも意識障害の患者さんについて触れているため是非参考にしてみて下さい。
そして、転職を考える上では、どの病棟、どの領域の科にいっても必要になる知識だと思います。慢性期でも急性期でも、どの領域の科でも武器になる知識があると転職をする際に自信を持って望むことができると思います。


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